とある病院の夜間の話。
救急車でおそらくSAH*1だろう、という患者が運ばれてきました。さっそく救急医の依頼でCTを撮りました。やはりSAHでした。出血量はかなりのもので、かなりmidline shift*2がありました。すぐさま脳外科の当直医が呼ばれ、原因検索のために造影検査が行われました。案の定、脳内に血管奇形があり、それが破裂したことによる出血らしいことがわかりました。時間はありません。脳外科医はその場で手術室に電話をかけました。頭蓋骨を開放して、脳にかかる圧力を取り除いてやるための緊急手術を行うためです。

手術室からの返事は「今すぐの手術はできない」というものでした。

午後の手術が長引いていて麻酔科医が足りない、介助の看護師の都合がつかない、というのがその理由でした。仕方なく、患者は脳外科医の付き添いのもと近くの病院に転送され、そこで手術が行われました。一命はとりとめたようです。

  1. 緊急手術ができない状況であるのに、救急部がそれを把握できていなかった。
  2. そのため緊急手術が必要になる可能性が高いことがわかっている救急症例を受け入れてしまった。
  3. 結果、必要とされる処置が開始されるまでの時間が長引いてしまった。

そんな病院は救急車の受け入れなんてやめちまえ。

*1:クモ膜下出血

*2:正中線の変位。今回の場合は出血によって脳が圧迫されていることを意味しています。