「一分一秒だって長く、あなたと一緒にいたいのに」
あたしは声に出してそう言った。それは嘘偽りない、瞬間の本音だったから。
「時間は問題じゃないよ」
彼は言った。もう一度、確認するように繰り返した。
「時間は問題じゃないよ」
あたしは、会っている時間の長さの問題じゃないっていう意見には両手を挙げて賛成!だった。だけど、そういう意味で言ったんじゃない、って意思表明のためにわざわざ言った。
「そんなこと、わかってる」
それから更に付け加えた。
「そんなこと言ったら、自己否定だもの」
言ってから『自己否定』はちょっとニュアンスが違うかな、と思ったけど、訂正はしなかった。過激な感じが否定の意思にはちょうどいいかと思ったから。
「あなたに時間が問題だって言われたら困るよ」
日本がいくら小さな島国でも、新幹線がいくら速くなっても、やっぱりあたしと彼の隔たりは存在するし、会いたいと思い立ってから即行動を起こしても、実際に会えるのは何時間も後の話。
不機嫌そうに言い返したけど、時間は問題じゃないって彼の言葉にある種の希望を見い出したことも事実。ここまでちゃんと話せば良かったな。あたしが思うよりずっと聡い彼のことだから、言わなくてももう知ってるかもしれないけど。